Music

音楽    M_026
私の好きな音楽の話
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イギリスのパブで撮られた Muswell Hillbillies のジャケット写真


誰だってそうだろうけれど、好きなものを尋ねられたとき、なんの躊躇もなく堂々と答えられるものと、答えるのが少しはばかられるものがある。 それがごく一般的なものなら特に問題はない。 また、たとえそれが特異なものであっても、その価値がわかること自体に誰もが羨望するようなものであれば、これも問題はないだろう。 しかし、ひとは敢えてそのようなものばかり選んで好きになるわけではない。 好きになるということは直感的な心の揺れであり、そこに理屈や見栄など入る隙はないのだ。 音楽でいえば、豪放磊落な男が夜中にひとり中島みゆきを聴いていたり、品行方正な淑女がセックス・ピストルズのCDを隠し持っていたとしても、人間とはそういうものであるとしか言えないのである。 ビートルズやサザンオールスターズのような、ある意味万人受けする当たり障りのない音楽を聴いていても、心の奥にぽつんとあいた小さな穴を埋めることができない場合だってあるのだ。 その穴を埋めるために、とまでは意識していないだろうけれど、ひとは結果的にその穴を埋めてくれるものを好きになる。 そのとき感じるどこか危うい"背徳めいたときめき"が、実は "好き"という感情の萌芽なのかもしれない。 英国のロック・グループ"キンクス"には、どこか怠惰で諧謔的な負のイメージがある。 サウンドや歌詞、それにRay Davisのすこし鼻にかかった声やビブラートを効かした歌い方がそれを特徴づけている。 高校生のとき、そんなキンクスなどまわりの誰も聴いていなかったけれど、ぼくは彼らが気になって仕方なかった。 ある日、意を決してMuswell Hillbilliesというレコードを買い、家に帰って初めてそれに針を落とした瞬間、確かにぼくは"背徳めいたときめき"を覚えていた。


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