Architecture
A-002    私がめざす建築は     s a / r a
simple architecture _ real architecture
狭い空間は透かす

日本という国は人口が多いわりに国土が狭く、また山が多いため住むのに適した平地が少なく、いきおい住宅は一所に密集してしまうことになる。 その上、日本人の特性でもある同調気質が一極集中という言葉があるように、密集を甘んじて受け入れている節もあるように思う。 通勤電車によくある車両の出入り口付近の密集と中間部の過疎は客観的に見ると滑稽だけれど、ひとりぽつんと離れているより、たとえ押し合いへしあい窮屈で息苦しくてもみんなと一緒にいる方が安心なのだろう。 (ぼくは変人だから、ぽつんとひとりでいる方が心地よい)

限りある平地にひとが密集すれば宅地は細分化され、そこに建てる住宅もそれに合わせて小さくなるのは当然の成り行きである。 欧米人から日本人は「ウサギ小屋」に住んでいると揶揄されたのは、なにも昔だけの話ではなく今に至ってもあまり変わっていないのが現状だ。 住宅は狭い方が良いと考える人はあまりいないだろう。 狭いところに長くいると、どうも考え方もこじんまりしてちっぽけな人間になってしまうような気がするのは、卑下しすぎか。 狭い住宅を広くするのは魔法じゃないと無理だけど、「なんとなく広く感じる」ようにすることは可能だ。

ひとつ、視界を広くし、見通しをよくすること。
天井からぶら下がる照明器具や背の高い家具など、視界を遮るものを極力除き、壁や家具の配置を工夫して出来るだけ視界が広がるようにする。

ひとつ、面を透かすこと。
間仕切り壁や建具にガラスなど透過性のある材料を用いたり、格子状にしたりすることで「面」を透かす。 また、階段の蹴込板をなくして踏板だけにするなど、「面」ではなくスカスカの「線」にしてしまうことで解放感が得られ、ついでに空気の流れもよくなるため、心も清々しくなる。

ひとつ、色数を減らし、明るい色にする。
いくら色彩センスのよい住空間であっても、色数が多いとどうしてもゴチャゴチャ感は否めない。 空間を広く感じたいのであればやはり色数は少ない方がよいし、色は暗く重たい感じの(明度が低い)色より明るく軽い感じの(明度が高い)色がよい。

ひとつ、整理整頓。(言わずもがな)

このように家を建てるときの工夫次第で、狭い家でも「なんとなく広く感じる」空間を手に入れることは可能だ。 「ウサギ小屋」などと言ってバカにしていた連中を一度家に招待してこの空間を見せてやりたいぐらいだ。 え~~っ?