Architecture
A-019    私がめざす建築は     s a / r a
simple architecture _ real architecture
ローコスト。合板でキッチンをつくる

合板はその昔「ベニヤ」あるいは「ベニヤ板」などと呼ばれ、安物の代名詞であった。 そもそも「ベニヤ veneer」とは材木を薄切り(スライス)した板のことであり、その薄板を数枚重ね合わせて接着したものが「合板 plywood」だ。 断面を見れば、薄板が重なっているのが確認できる。 「板」という字は木が反ると書くように、1枚の木の板(単板)だと反って変形しやすいため、合板は薄板を繊維方向が直交するように交互に貼り合わせることでその問題を解決している。 また、貼り合わせる接着剤の種類によっては屋外の湿気の多い場所での使用に耐える「合板」もあり、比較的安価ではあるけれど実はなかなかの優れものなのだ。
健康志向や環境問題もあって住宅建築に自然材料を好んで使うひとは多く、わたしもそのひとりなのだが、内装の仕上げに珪藻土(けいそうど)とか木がよく用いられる。 その点でも合板は無垢(むく)ではないが、接着剤を除けば100%木であることに変わりなく、自然材料として用いられるのだ。 合板の材種は南洋材である広葉樹のラワンが一般的であったが、熱帯雨林の大量伐採が環境問題となり1990年代頃からヒノキや杉、カラマツなどの針葉樹が大半を占めるようになった。 ただ合板をそのまま仕上げとして用いる場合、表面がザラザラしていて木目も粗い針葉樹は肌触りや見た目で敬遠されることが多く、割高にはなるけれどシナとかラワンの広葉樹合板がよく使われる。

建築を規模や工事金額の多寡で語るのは愚の骨頂だ、と建築を学ぶ者は誰しも一等最初に教え込まれるのだが、いざ建築を生業とすれば、釘1本打ってもらうにも釘代と工賃が必要という現実を前にお金の対価性を身に染みて感じるようになり、つい「予算がもうちょっとあればなぁ。。。」などと愚痴ってしまうのだ。 「お金がなければ頭を使え」とはよく言われる言葉だけれど、建築でいえば「予算がなければ建築家に頭を捻(ひね)らせろ」ということになるのかもしれない。心せよ。