Architecture
A-022    私がめざす建築は     s a / r a
simple architecture _ real architecture
多様な形を積み上げていく

幼児が遊ぶいろいろな形をした積木は、わたしたちに多くの示唆を与えてくれる。 積木を平面的に床に並べて図形として遊ぶ段階が終われば、幼児は重力に逆らってそれらを積み上げようとする。 この場合、いろんな形の積木があるより、立方体と直方体がたくさんあるほど遊びに展開が生まれるという。 円柱や三角柱は形態的には面白いけれど、他の積木との関連で、それらを組み合わせて積んでいくのは、幼児には少し難しいらしい。 だからそれらは最後に飾るために用いられることが多いそうだ。 また、積木の基尺がそろっていることも重要だという。 バランスをとりながら積み上げていくには、面と面がうまく重なって、その長さも同じであるほうがいい。 積み木は、位置、配列、比較などのセンスが必要で、物事の特性や本質をどれだけ正確に理解し、使いこなせるかが問われるのである。 さて建築において、西洋で発達した組積造はさながら積木である。 組積造の大型建築は、古代エジプトに始まり、中世のゴシック建築で大きく技術が飛躍した後も19世紀に至るまで主流であった。 20世紀にはいるとまもなく、鉄骨構造とエレベーターの技術向上で、New York の摩天楼に代表される超高層建築が出現することになる。 しかし、デザイン面では旧態依然とした積木建築であった。 ゴシック建築を上下二分したような重厚な基壇部と頂部、その間に挟まれた数十層のオフィス・フロアーからなるけれど、積木でいえば、直方体や三角柱を組み合わせて基壇部をつくり、その上に平たい四角柱を何枚も重ね、頭に三角柱を立てる、といった具合である。 頭の三角柱を尖塔にしても大きな違いはない。 しかし、頭の三角柱や尖塔を無くしてしまうと、間抜けで単純な形態になった分、建築のプロポーションに力を注がざるをえなくなった。 デザインにおける積木からの開放。 直方体を一本立てただけの建築。 良かれ悪しかれ、これが建築のモダニズムの始まり、ということになるのかもしれない。 (2,001年9月11日のテロで破壊された世界貿易センタービルは直方体を2本立てただけの建築といえる)