Architecture
A-024    私がめざす建築は     s a / r a
simple architecture _ real architecture
イメージを鉛筆でドローイング

設計とは、まずメージをつかみ、それを発展具体化させる行為だと思う。 紙切れに図や言葉を走り書きしたり、薄い発泡スチレン板をカッターで切り貼りして立体工作したり、また部屋に転がっている木や建材の切れ端、小さい空き缶、アルミの型材などを組み合わせて形にしてゆく。 とにかく、イメージが展開してゆくスピードに負けず、次から次へと形にして確認していくのだ。 昔手書きしていた図面は1980年代後半からのパソコンの普及にともないCAD(キャド/Computer Aided Design)という設計支援ツールが急速に進化し、2次元図面だけでなく、3次元の建築モデルをディスプレイ上で自由に加工・着色し、それを回転させることによってあらゆる角度からイメージの形成が可能になった。 2010年代に入るとAI (Artificial Intelligence 人工知能) の開発が進み、より創造性が進化した生成AI (Generative AI) が2020年以降既に設計の実務にも導入され始めている。 しかし、時間をかけて手で図を描いたり模型を作ったりする行為は、形に添ってリアルに身体を動かすことで脳や五感を刺激し、想像力を増進させてイメージの展開につながっていくように思え、わたしは好きだ。 一般的に、設計図面は大まかな方針が決まった段階で描き始めるけれど、まず平面図を描き、次に立面図・断面図、そして詳細図、というように順を追って仕上げていくものではなく、すべてが同時進行していく。 なぜなら、建築は3次元であるため平面と立面・断面は一体であり、各部の詳細の集合が建築であるからだ。 だから設計しているときは頭の中が混沌とし、はたしてイメージ通りにまとまるのか不安だ。 部屋の配置や窓の位置・大きさ、屋根の形、仕上等、あるいはそれらの技術的な納まりなど、決めなければならないことはたくさんあるが、結果的にそれらが破綻をきたすことなくひとつの建築としてまとめ上げるためには当初のイメージがバックボーンとして大きくかかわるのではないかと思う。 なにも初めからそのイメージにとらわれているということではないのだけれど、終わって振り返ると、そのイメージが「よりどころ」となっていたことに気付くことが多い。 それだけはじめに浮かんだイメージというものは大切なのだ。