Architecture
A-033    私がめざす建築は     s a / r a
simple architecture _ real architecture
吹抜けの本棚

以前、荒川洋治という詩人が、本を読む人をいくつかに分類していた。 それによると、趣味は読書の人、本好き、読書家、読書人、蔵書家、愛書家と分類している。 好きな本を心を込めて読む愛書家に対して、蔵書家と呼ばれる人はたいてい書庫を持ち、読むことより、 所有・所蔵に価値をみるらしい。 私はといえば、本は比較的好きだけれど、仕事で必要な本以外はすべて図書館を利用している。 収納ス ペースがないというのが一番の理由だけれど、音楽の CD は増える一方なので、あまり本の所有には興味がない、というほうが正確であるかもしれない。 本を購入する人は、それを捨てるかリサイクルに出すかしない限り本は増える一方だ。 なんとか効率よく整理しなければならなくなる。 そこで本棚が登場する。 本棚とは本来、本を整理・収納するためにあるが、本を見せるためのものでもあると言えないだろうか。 それはひとつの空間をつく る上で大きな要素となり得る。 古くて大きな図書館などで、たまに周囲360度、床から天井までほとんどすべて本で埋めら れた空間に出くわすと、一種の知的興奮と感動をおぼえる。 同じ体積でも一つの大きな物体より、小さいものが多く集まってできた物体の方が視覚的に圧倒されてしまうように、本一冊一冊は小さいけれど、それが集積するとえも言われ ぬ力が空間を支配するのである。 加えて、それらの本に各々思い入れがあるとなると、その空間には10倍、100倍の力が加わり、その所有者にとってかけがえのない至福の空間になるのではないだろうか。