Architecture

A-047
私がめざす建築は
  s a / r a
simple architecture _ real architecture




オフィスをカラフルにする


オイルステインでこげ茶色に着色された木の事務机に代わって、戦後米軍払い下げのグレーのスチール机が出回り、それを模した机が日本でも大量生産されるようになったのは 1,950年代後半の岩戸景気に沸いていた頃である。 無骨だけれど、軽くて丈夫なその机は、ぼくが社会に出た'80年でも事務机のスタンダードとして、同色の座面と背もたれがビニール張りの椅子と共に広く使われていた。 その頃の会社の執務空間といえば、白い壁に白いジプトーン(トラバーチン模様の石膏ボードの商品名)の天井、床はベージュの Pタイル、といった具合である。 その地味な空間に、ビニールの座面に長時間座っていると蒸れるので、各自が用意したやけに派手な色や柄の座布団だけが目立っていたのを懐かしく思い出す。 それが'80年代半ばになると、米国譲りの C I(Corporate Identity 企業イメージの統合)という掛け声とともに少しずつ変化し、新しいオフィスビルが多く建て替えられた'90年前後のバブル経済を経て、パソコンの普及も相まって 執務空間は大きく改善された。 建築の仕上げでいえば、岩綿吸音板が貼られた天井や、タイルカーペットが敷かれた床が増え、椅子の座面や背もたれは吸湿性のある織物が普及した。 しかし、色彩という面ではどうだろうか。 仕事は「真面目」に取り組むものであり、当然その空間も「真面目」なものでなければならない、という考えに異論はない。 しかし、地味な無彩色や木目調が「真面目」であり、カラフルであることは「不真面目」という、暗黙のコンセンサスは未だ根強いのではないだろうか。 これは目立つことを良しとせず、地味に他と同化しようとする国民性でもあるけれど、日本人が陥りやすいストイックな状況に追い込む精神主義的なものもあるような気がする。 だから、それらから解放されない限り、真の快適な執務空間を得ることは出来ないのかもしれない。 赤色はエネルギーを与え、青色は心の静けさをもたらすなどという、色が人間の心理に与える影響を上手く利用し、多様な色を自由につかった執務空間を、ぼくはいつも夢想しているのである。