私の好きな音楽の話 |
1,980年12月8日、ジョン・レノンが射殺された日のことは今でもよく覚えている。
ぼくはその頃、働きながら夜間の専門学校に通っていた。
休み時間、誰かが「ジョン・レノンが殺されたらしいぞ」とささやいているのが耳に入った。
すぐ彼に問いただしたが、情報源があいまいで真偽はつかめなかった。
そういうことにしたかった。
信じられないというより、信じたくない気持ちのほうが勝っていたから。
下校時、学生があちこちでジョン・レノンの話をしている。聞くのが嫌だったから、ひとり足早に駅へ向かった。
阪神電車で梅田に着き、改札を出て階段をかけ上った。
いくつかの人だかりが出来ていた。
胸がドキドキした。
そのひとつを覗いてみると号外を配っていた。
ジョン・レノンが射殺されたことを報じる号外だった。
生前の顔写真がやたら大きく、文字は少なかった。
事件の詳細はまだわからなかったのだろう。その顔写真の、ジョン・レノンの目を見つめた。
死を受け入れた。
受け入れざるを得なかった。
事実だから。
家に帰ってテレビをつけると、ジョン・レノンの死を悼む特別番組が映し出された。
あまり見る気がしなかった。
中学生の頃から大好きだったジョン・レノンが死んだというのに、なぜか思ったより悲しくなかった。
明日も仕事だ。
いつもどおり風呂に入って、イマジンを聴いて寝た。
今でも時々ジョン・レノンを聴く。
ぼくは知らぬ間に、彼が死んだ年齢を越えてしまった。
でも不思議だなぁ、いつまでたっても彼はぼくより年上であるような気がする。