私の好きな音楽の話 |
GS、I love you.
ビートルズが来日した翌年(1,967年)、雨後の筍(たけのこ)のようにGS(グループ・サウンズ)が誕生した。
その頃ぼくは小学生だったのだけれど、かれらの歌や風俗に夢中になったものだ。
わけもわからず歌詞を覚え、大きな声でよく歌っていた。
中学生になってからは洋楽を聴き始めたこともあり、流行歌を口ずさむことは少なくなった。
だから今でもよく口ずさむのはGSの歌、ということになる。
しかしGSの歌詞はいたって「うぶ」なので、人前で歌うには抵抗がある。
ジェニー、シルヴィ、アニタ等の女性の名前が恥ずかしげもなく登場し、欧米・白人志向が露骨でもある。
そういえばファッションもなぜか中世ヨーロッパ風であったような気がする。
高度成長期、憧れの欧米化が一挙に進んだ日本社会の「写し」であったのだろう。
「男らしさ」や「純朴さ」より、ジュリー(沢田研二)やショーケン(萩原健一)に代表される、色白の細身で長髪に甘い顔という「中性的」な容姿と退廃的、あるいは都会的な魅力が彼らに求められていた。
でも今振り返れば、GSの連中もファンも、いやあの頃の日本社会全体が、無いものねだりの高望みをしていたように思える。
緑の瞳をした髪の長いかわいい女の子なんてどこにもいないし、煉瓦の街角や渚とか湖なんていうシチュエーション自体どうも現実味がない。
GSとは、「夢」であったのだろう。
「夢」から覚めた若者は、現実の不条理に学生運動で立ち向かうわけだけれど、実はそれも「夢」であったことにかれらは気づくのである。
「夢のまた夢」が終わったそのあとに、ぼくたち「シラケ世代」が登場するのだ。
小学生のときにGSを、中学生のときに全学連を、ともにテレビのブラウン管で「通過儀礼」しまったぼくたちは、シラケざるを得なかったのだ。