私の好きな音楽の話 |
どの世界にも「玄人好み」と呼ばれるものがある。
必ずしも一般受けはしないのだけれど、その筋に長(た)けたひとたちの目にかなったり好まれたりするものがそれである。
また他のひとにはうかがい知れない、同じその道で生きてきたもの同士でしかわからない「心情」に共感する場合もそれにあてはまるかもしれない。
音楽でいえば、ヒットチャートを賑わすことがなくとも多くの歌手に取り上げられ、大切に歌い継がれてきた歌などにそのようなものが多い。
歌手やコメディアン等、一般に「芸人」と呼ばれる職業は人気商売である。
売れているときは華やかで実入りもいいのだけれど、その分落ちぶれたときの惨めな寂しさは人一倍であろう、と想像する。
当然その浮き沈みを人生になぞらえ、チャプリンの「ライムライト」など昔から多くの映画や小説の題材にされてきた。
しかし、いくら主題が一般化されていたとしても、当の「芸人」がそのような作品を観たり読んだりしたときの受取り方は如何なものであろうか。
他人事ではない、という真摯な共感を持つのかどうか知らないが、いまは人気絶頂であっても、いつ落ちぶれてしまうかわからないという恐怖心を、かれらはつねに抱いているはずだ。
だからそのような作品や主人公に対する感情移入は自然と強くなるのではないかと思ったりする。
落ちぶれていまは監獄で暮らすコメディアンを歌ったジェリー・ジェフ・ウォーカー(Jerry Jeff Walker 1,942~ 米)の「ミスター・ボージャングル Mr.Bojangles」もそのような作品である。
大ヒットはしなかったけれど、多くのアーティストがこの歌に共感しカバーしている。
ぼくの大好きなNilssonやBob Dylanも歌っているのだ。
♪ 頼むよミスター・ボージャングル、もう一度踊っておくれ ♪