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そ の 他    O_009
興味をもったことなど・・・
エゴン・シーレ
ほおずきのある自画像 1,912年作

19世紀末、フランス・イギリス・ベルギーで花開いたアール・ヌーヴォー(art nouveau 新しい芸術)は、ドイツ・オーストリアではユーゲントシュティール(Jugendstil 青春の様式)と呼ばれ、絵画・彫刻・建築そして工芸に至るまで、あらゆるデザインに影響を及ぼした。 特にウィーンでのそれは、700年にわたって隆盛を極めたハプスブルク家の終焉と重なり、世紀末という言葉にふさわしいどこか退廃的な背徳の美を擁しているようにみえる。 建築ではワグナー、ロース、ホフマン、絵画ではクリムトが活躍しており、ほかに音楽ではブルックナー、マーラー、心理学ではフロイト、哲学ではウィトゲンシュタイン等、この時期のウィーンは、長い歴史の最後のともし火であるかのようだ。 17歳でアトリエをかまえ、いち早くその才能をクリムトに見出されたエゴン・シーレ(Egon Schiele 1,890~1,918 オーストリア)の活動は新しい世紀に入ってからだけれど、作品から漂う空気はまさしく世紀末である。 クリムトとの共通点のひとつは「エロティシズム」だが、クリムトのそれは様式的でありながら、絢爛豪華な配色と、女性の表情にエクスタシーのすべてを語らせるのに対し、シーレの絵は死を予感させる暗い色調と、人物の不自然な演劇的ポーズが、内面のエロティシズムを表出しているといえるだろう。 けっして美しくはない。彼が描く人間の皮膚は腐敗しているのか、あるいは傷だらけのようで痛々しい。 それがゴツゴツと骨ばったからだで絡み合ったりしているので、とてもじゃないけれど、見ていても気持ちよくない。 こちらの心までヒリヒリしてくるのだ。 また絵の中の人物は冷めた目をしてこちらを見ており、心の奥底まで見透かされるようで怖くもある。 しかしシーレの絵を見て思うのは、不思議なのだけれど、どこかポップな感じがして、21世紀の今の若者に通じるカッコよさがあるということだ。 28歳でスペイン風邪で死んだシーレのとがった感性は、内面をさらけ出した分、100年以上たった今でも十分等身大で受け止めることができるのである。