ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner 1,861~1,925 オーストリア)はドイツを中心に活躍した思想家である。
活動範囲は、教育、芸術、哲学、心理学、建築、医学、天文、農業、そして経済にいたるまで多岐にわたったが、それらはすべて彼の思想の中核をなす人智学(Anthroposophyアントロポゾフィー)に昇華されている。
シュタイナー教育
として、日本でも彼の名を知る人は多い。
教育あるいは社会制度上、そのまま日本に取り入れることは難しいけれど、幼児教育として実践しているところもある。
時間泥棒「モモ」や「はてしない物語」でおなじみのミヒャエル・エンデは、17歳の時シュタイナー学校に転校している。
2年足らずで退学したそうだが、その作品にはシュタイナーの理念が息づいているといわれる。
さて、シュタイナーは幼い頃から神秘的なことに関心が強く、あらゆるものを数値で証明してきた自然科学に疑問を抱いていたようだ。
ある意味、時代に逆行していたともいえる。
100年もさかのぼって「植物変態論」の著作もあるゲーテの自然感に共感し、生涯それを追い求めることになる。
科学的根拠のないことも平気で講義した。
作家のカフカはそういう彼のことを嫌っていたにもかかわらず、たびたび講義を聞きに行ったそうだ。
事実でなくとも、そこに真実を見ることができたのだろう。
ものごとを有機的にとらえ、霊(精神)や宇宙を常に意識した意思でもって、すべてのものに魂を吹き込む、というのがシュタイナーの思いだったのかもしれない。
晩年、ゲーテアヌムという人智学運動の拠点をつくった。
その建築の彫塑的でもあり有機的でもある造形は、彼の思想を表したものである。
上の絵は、シュタイナーが学生に講義した時の黒板だ。
あまりにも美しいため、学生が黒板に黒い紙を張り、それを約 6年分(1,000枚)保存していたという。
確かに、パウル・クレーに匹敵する美しさがある。
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人間よ、お前は宇宙の縮小された姿だ。
宇宙よ、お前は遥かな果てにまで流れ出た人間の本質だ。
(ルドルフ・シュタイナー)