Music
音楽    M_003
私の好きな音楽の話
Erik Satie は数奇なひと

Erik Satie(エリック・サティ 1866~1925 仏)は、ユーモアと機知に富み、権威に抗いながらも純粋で、透明感があり美しく、そして高度な知性を感じさせる作品をつくり続けた作曲家であり、環境音楽の先駆者でもある。 曲名は知らなくとも、テレビ番組等の BGM で彼の曲を耳にしているひとは多いはずだ。 彼が生きた時代から 100年たった今、自分の作品がそのようにして生き続けていることに、天国にいるSatieはきっと満足しているだろう。 彼は晩年になって「調度品としての音楽」を提唱し、優れた家具のように「存在を意識させず、空間の心地よさを提供する」音楽をめざした。 静かなよい環境で身を入れて音楽を聴いてもらいたい、というのが一般的な作曲家の願いであるだろうし、それがまた音楽に対する敬意でもある。 しかし音楽が主体になるのではなく、本来は Satie が提唱したように、音楽が流れている空間の雰囲気や、その雰囲気を楽しむわれわれが主体であるべきだろう。 このような音楽に対する彼の姿勢は、ぼくたち建築家にも示唆を与えてくれる。 建築が「でしゃばった」空間や街並みを目にすることがよくあるけれど、実は「存在を意識させず、空間の心地よさを提供する」建築を目指さなくてはならないはずだ。 さてErik Satie は、自作の曲に「犬のためのぶよぶよしたプレリュード」などという奇妙なタイトルをつけたり、私生活でも奇行が多かったためか、不遇の人生を送ったようだ。 しかしそれによって得た孤独と自由があってこそ、彼の非凡な才能が開花したともいえる。 貧しかった若い頃、モンマルトルのカフェでピアノを弾いていたというが、彼のことだ、そこに愉悦の音空間をつくりあげていたであろうことは想像に難くない。 なんと、贅沢すぎる。。。