Music
音楽    M_019
私の好きな音楽の話
いちご白書

ぼくは二十歳だった。
それが人生でいちばん美しい年齢だなどと誰にも言わせまい。

という「アデン・アラビア」(ポール・ニザン著)の冒頭は有名だ。 二十歳以上のひとはみな二十歳を経験しており、百人いれば百通りの二十歳があることぐらい知っている。 しかし十九歳にとっての二十歳は、人生の単なる通過点ではないはずだ。 今から37年前、James Simon Kunenというアメリカの大学に通う十九歳の学生が、1,968年4月~8月を中心に、身の回の出来事(学生運動)や、それについての思いを日記風に書き留め、「学生はいちご(赤い→共産主義)が好きだね」という学長の発言をもじり、題名を「The Strawberry Statement」として発表した。 1,968年といえば、5月のパリで、学費値上げ反対を発端とし、学生だけでなく労働者を巻き込んだ反体制運動、いわゆる「5月革命」があった年である。 「The Strawberry Statement」は全米で評判になり、2年後に映画化され、カンヌ映画祭で賞をとったりもした。 「いちご白書」という邦題で日本でも上映されたけれど、人気はなく、2週間で打ち切りされたという。 しかし、Buffy Sainte-Marieが歌うその主題歌「Circle Gameサークル・ゲーム」は流行った。 実は、ぼくが洋楽で一番初めに好きになった曲がこの「Circle Game 」なのだ。 ビブラフォーン(鉄琴)の軽快なイントロを聴くと、懐かしくて今でも嬉しくなる。 「人生はめぐりめぐる」という主題の単純な曲なのだけれど、再上映(TVだったかな?)されたとき見た「いちご白書」の甘酸っぱいだるさと相まって、この曲はぼくにとって一生(笑)忘れることの出来ない大切な曲になってしまったのだ。